1年ぶりですが生きてました。
まんがタイムきらら Advent Calendar 2022
今年もこの企画に参加することにしたのでなんか語ってみます。
・4コマ漫画のコマ表現
以前から言っているのですが、4コマ漫画が4×4のページ構成で固定されているのは漢詩や短歌のような定型詩のようなものと認識しています。その構成を守ったうえで個性的な表現を工夫したり、時々はあえてその縛りを取り払ったりという楽しみがあるのではないかと。
そしてきらら4コマもジャンルとして相当の成熟を遂げた昨今、各作者様がそれぞれ試行錯誤を繰り返して独自の表現を披露してくれてますね。
そんな中でわたしが特に印象的だったきらら作品のコマ表現を紹介してみます。
単に好きなシーンを挙げるだけのような気もしないでもない。
・『グレーゾーン』4224
きららで表現に挑戦した作品といえばやっぱりこの作品に言及せざるを得ないですね。
手元に当時のMAXが残っていないのですが、4コママンガのススメWeb様に紹介記事が載っていますので見てください。今見てもほんとに斬新ですごい。
伝説の読切「グレーゾーン」に見る、4コママンガの正体 | 4コママンガのススメWeb
https://4komasusume.tumblr.com/post/149743980915/mizuike1608-grayzone
ふつうの雑誌に載っていたらどう読むのかわからなくなりそうなところですが、4コマ誌という共通認識のうえに成り立った中にあるがゆえに見えないコマ割りが見えるという挑戦的なスタイル。
正直このスタイルで連載を続けられるというほどではない一発ネタではありますが、それでもやはりきららの歴史の1ページの片隅には残されるべき作品ですね。
ちなみに当時のきらら勢の反応はこんな感じ。
togetter.comこの読切が載ったのはきららMAX2012年8月号。……2012年?!
時の流れは早いっすね……。
・『ぼっち・ざ・ろっく!』はまじあき
アニメも絶賛放映中のぼざろ。
アニメ8話でもバリバリにキマったライブシーンを見せてくれたぼっちちゃん。ライブ中にめちゃくちゃぼっちちゃんをチラ見する喜多ちゃんいいですよね。ここ以外でもアニメスタッフの原作補完が絶妙でほんとうに良いアニメ化をしてくれています。
原作でも初めて大ゴマ演出を解禁してぼっちちゃんの横顔をババンと見せてきたこのページは衝撃が大きかったですね。TLのきららクラスタでもこの回あたりから人気が決定的になってきた印象。
1巻108Pより。山田すげー疲れた顔してんな
クライマックスで4コマの枠を外して大ゴマで見せる演出自体はよくあるものですが、そこまで溶けたり崩れたりしてたぼっちちゃんがめちゃくちゃ格好いい表情を顕にしてギターを弾き鳴らすシーンはとても印象的でした。これは喜多ちゃんも店長も惚れるし廣井も真顔になる。
これ以降でもだいたい1巻に1回くらいのペースで超絶イケメンと化すぼっちちゃんには毎度ハッとさせられますね。
2巻95Pより
ぼざろではこのシーンも好き。そもそも結束バンドの演奏自体にまったく興味がないことを表したような真っ白背景が意味深です。3コマ目、ギターヒーローに気づく直前のぽいずん♡やみ14歳のぽけっとした素の表情が貴重。
ぼっちちゃんの演奏を初見で"ギターヒーロー"と看過したぽいずん♡やみ14歳は耳は確かなんですよね……廣井といいヨヨコといいこの世界の才能あるやつは致命的に社会からはみ出した奴ばっかりだな……。
ミラクの屋台骨のひとつであった美術×料理4コマ。
とくにカラーページで魅せられる鮮やかな料理作画とかわいさと色気のギャップが魅力的なキャラクター、心温まる交流を経て少しずつ成長していく登場人物を中学~高校卒業までのわりと長いペースで描いているので、たいそう愛着の湧く作品でした。
1巻で描かれた椎名さんと町子さんの屋台での出会いでしたが、その裏に隠された椎名さんの想いが最終巻で明かされた回はたいへん感慨深かったですね……。
椎名さんきらファンでもリンゴ飴持ってるのいいね……。
そんな幸腹グラフィティから印象的なシーンを挙げるとすればこのページですね。
むしろこのページを紹介したくてこの記事を書いたまである。
5巻100P,101Pより
4×4の構図を4人のキャラにあわせて構図を揃えていてたいそう美しい。
4者4様のリアクションを見せつつ時系列にあわせて横にも読めるようになっているのがすてきですね。
・『エンとゆかり』しろううらやま
きらら4コマでバトルアクションものをやろうとした意欲作。アクション漫画だとやはりコマ割りで躍動感を出すのも技法のひとつなので、4コマにどう落とし込むかと思っていたらこうなりました。
1巻88P,89Pより
この1ページだけでも目まぐるしく視点や構図が変わり、スピーディな攻防の緊迫感と迫力が存分に表現されていますね。縦並びのコマを時系列ではなく空間内での位置関係にあてはめる表現はときどきありますが、それをバトルシーンに応用するというのは完全にアイデアの勝利ですね。
左端2コマ目などは中割りのごとく詰め込んで一瞬のタメを両者同時に見せつつ、3~4コマ目を繋いで鍔迫り合いの一瞬の硬直を印象的に見せながら次ページへつなぐなど緩急の操作が巧み。
コマ演出とは直接関係ないのですが、どの漫画でも作者がこのシーンをいちばん描きたかったんだろうなーという熱意が漏れ出てきている回ってありますよね。『エンとゆかり』ではこの第10話がそうだったんだろうなーという勝手な想像。
・『こはる日和。』ねこうめ
「教師と生徒の親が百合不倫する漫画」こと『こはる日和。』ですがこのページの表現は斬新でした。
4巻89P,90Pより
ページの表裏でロッカーの内外を表現するという試み。雑誌連載時はページ紙が薄いので中が微かに透けるような雰囲気があってなおさら良かったですね。
しかし読み返してみたらほんと百合不倫回すごいね…きららコンプライアンス的に大丈夫だったのかこれ……。
・まとめ
まだまだ紹介したいシーンはいろいろあるのですが、今回はこのくらいで。
たとえば今月の『メールブルーの旅人』とか。
【きららキャラット1月号】こだまり先生「メールブルーの旅人」、留学生として蒼世高校に入学してきた熊野未来、通称クマちゃん。そこで出会った陸希・想良・櫂とともに、ロボット研究を始めることに!? pic.twitter.com/87zZ1yRJVj
— まんがタイムきらら編集部 (@mangatimekirara) 2022年11月27日
ネタバレなので張りませんけどコマを直接的に画面として描写しつつ、その手前にいるハカセとの2層構造として同時に見せてくるのはいい感じにコマ割を生かしていますね。根本的にハカセがそれぞれの世界を俯瞰的に眺めているという設定なので、四角いコマをモニターとして扱っているのとなじんでいますね。
『メールブルーの旅人』はポストアポカリプス&並行世界SF的な設定とわりとお気楽かついい人ばっかりな登場人物のマッチが魅力的で、今年の新連載の中でもイチオシです。
単行本発売が楽しみですね。
今後とも4コマ漫画界においてもいろんな表現が生まれるといいなあ。
それではまたいつかお会いしましょう。